遙 洋子 Yoko Haruka

遙日記

zoomで講義

2020.12.02

大学の講義をズームでずっと受けている。

先生達は、かつてのゼミ仲間だった。

 

ズームって、想定外の現実が起こる。

「今日は30分経っても講師が来ないので、休講にします。・・・あ! 今、先生が来ました!」

「すみません! 寝てました」

・・・・寝てた・・・

やるな・・・。

ズームの時代ならではだ。これが来校しての講義なら、研究室からずっと生徒に囲まれて、寝る、なんてあり得ない。

 

「先週、ズームから落ちて、講義にもう入れなくなった生徒がいます」

・・・わ・・・私だ・・・・私のことじゃないか。かっこわる・・・。

「今回からは、ズームから落ちても、再度入れるように設定を変えました」

変な時代だ。私、講義に参加してたのに、ボリュームあげようとパソコン触った途端、二度と講義に戻れなくなったんだ。

あれ? あれ? って、いろいろ触ったけど、教室から、私、忽然と消えたんだ。で、二度と、現れなかったんだ。

こんな現実って、ある? 教室から生徒が忽然となんの前触れもなく、消えるんだで・・・。今の時代。

 

「講義終わっても、遙さんは残って・・・」

悪い予感がした。

「遙さん。なぜ、画面の共有ボタンを押すの?」

「は?・・・・」

「生徒100人が、遙さんのパソコンのデスクトップ画面を見ていることに気づかない?」

「だって、スライドが見えないから、あれ? あれ? って、いろんなボタン押した・・・」

「スライド見えなくても、じっとしてりゃ、いつか授業が始まったら、見えるのよっ」

「・・・生徒が私の何を見てるの?・・・」

「だから、画面の共有ボタンを押すから、生徒全員が、バレエ写真だの、プロフィール写真だの、遙さんのデスクトップのフォルダーを見てるんだよっ。毎回、講義の度に、遙さんのデスクトップ画面が出るから、慌ててこっちで消してるんだよっ。もう、毎回、毎回・・・! もう、うちの生徒、全員が知ってるよ! 遙さんのデスクトップにどんなフォルダーがあるか!」

「うっそーーーーーっ  なんでもっと早くに教えてくれないのよっ」

「言ってるわよ! 画面の共有ボタン押すなって!  なのに、毎回、毎回、講義の度に、遙さんの画面が生徒全員に流れるのよ!

大変よもう。こっちも、いちいち消すんだからねっ。なんで画面の共有ボタン押すのよっ」

「だって、スライド見えないんだもんっ」

「だから、じっとしてりゃ、いいのよっ」

「なんで、もっと早くに教えてくれないのよおおおおおお」

「言ったわよっ。遙さんが理解してないんでしょっ」

「だから、今みたいに、言ってくれればいいじゃんよおおお。なんで、講義の終盤になって教えるんよ。なんで、一発目の失敗で、そう教えてくれんかったんよ!」

「もう、覚えたからいいじゃん」

「わぁぁぁ。かっこわるぅぅぅ。わああああ」

 

わああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 

・・・寝る・・・

 

 

 

 

 

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