遙 洋子 Yoko Haruka

遙日記

切羽詰まると同志ができる

2021.03.25

トレーナーがダンベルを片づけ始める。

その様子と時計を交互に見ながら、頭の中で残された時間でできるトレーニングを考える。

他の男性の動きを見た。

え? ふくらはぎ鍛えてたはずが、今、肩??

え? で、またふくらはぎ?

彼の戦略が見えた。

休憩時間が惜しいから、その時間に他の部位を鍛える戦略だ。

・・・なるほど。

あと15分でジムが閉まる。

私は腕を捨てて、足腰に移動した。ラスト5分。

腹筋を鍛える。

鍛えながら、男性を見る。

まるで、テレビのゲーム番組みたいに、あっちこっちのダンベルを渡り歩き、1分を惜しんで鍛えてるのがわかる。

 

そして11時の閉店時間になった。

私は腹筋で終わる。

見ると、男性はまだダンベルを上げている。

とことんねばるつもりだ。

私が上がろうとすると、すがる思いで私を見る視線に気づいた。

・・・帰らないで・・・

そう視線が言っている。

二人で見合わせ、ニタ、と、笑った。

 

しばらくそこにいて、ゆっくりと上がることにした。

鍛えながら、相手の鍛え方を見る。

そうくるか、と、相手の計算を見る。

いつしか、同志になっている。

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