遙 洋子 Yoko Haruka

遙日記

私のガウディ

2022.08.26

家は最大最長の作品だと思う。

一日の動線で「あ」というストレスを少しずつ解決していく。

壁のフックにかけたガウンが落ちる。

「あ」と感じたから、イケアで長く飛び出たフックを買った。

ひっかけが飛び出してるから、ほいっ、とかけたら落ちない。

もうご機嫌で、ほいっ、とバスタオルもかける。

このフックを私のポールに合うようにしてくれたのが、棟梁だ。

「ごめんね・・・ビル一棟建てられる棟梁に、フックのひっかけを伸ばしてもらって・・・」

「いいんですよー」

「ね。これもイケアで買ったんだけど、電気つけてくれる?」

「いいですよー」

「ごめんね。ビル建てられる棟梁に、電気つけさせて・・・」

「いいんですよー」

ヒザ抱えて座り、作業をじっと見る。

「優しい知人がいたらね、夫いらんなぁ、って思ってる」

「僕、健康に長生きするから、ずっと頼ってくださいよー」

 

一個ずつ、一個ずつ、暮らしを作っていく。

そうやって私カスタマイズするのが家なのだとしたら、ずいぶん長い人生を、雑で乱暴な空間で寝起きのみしてきたものだ。

ガウディの聖家族協会みたいに、死んでもなお完成しない協会。

私の家もガウディみたいに、毎日ずっと完成に向かってる。

終わりのない家づくりを、棟梁と共に作っていく。

「棟梁、この棚、白いペンキ塗ってーーー」

「いいですよーーー」

「とーーりょーー」

 

 

 

 

share

Tweet

  • 猫様のお言葉
  • 日経ビジネス電子版