遙 洋子 Yoko Haruka

遙日記

大工の棟梁の愛

2022.07.14

大工さんの棟梁が来た。

もう古くからの馴染みだ。

「コーヒーと紅茶とどっちがいいですか」

「僕はいつもコーヒーなんです」

「じゃあ、豆からすりたてのキリマンジャロにする?それとも私のイチオシ紅茶にする?」

「ううううううううんんん」

「いつもコーヒーならコーヒーにする?」

「紅茶!!」

爆笑して作った。

 

「ええっ? おいしいですっ!!」

「紅茶もおいしいでしょ?、それはロンドンアールグレイ」

「へーーーー」

「で、こっちが、シンガポールアールグレイ、これは基本的なアールグレイ。三つを嗅ぎ分けてみて。全部香りが違うから」

「うわあああ、ほんとや。いい香りですなぁ。」

「買ってきてあげる。どれがいい?」

 

棟梁は何度も3つの茶葉を嗅ぎ分けて言った。

「シンガポール」

「え?おいしいと言ったのは、ロンドンだよ?」

「ロンドンはもう今日経験しました。次はシンガポールいってみたい・・・」

 

年に一度、妻と温泉旅行だけが余暇の棟梁。

棟梁が言った。

「あの、この、封をあけた紅茶パック、持って帰っていいでしょうか。妻に飲ませてやりたい」

 

ええ夫や。ええ夫や!

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