「あなた有名人ですよね」

「違うよ」

「あなた、あの人ですよね」

「よく間違われるけど違います」

・・・この会話、何百回しただろう。

この会話が始まると心に暗雲が立ち込め沈鬱になる。

「先生、生徒さんにバレた。もし聞かれたら、違うって言ってくれますか」

「よく間違われるのよ、って言ってればいいのよ」とお姉さんキャラおじさん先生。

・・・バレたら私が認めるまであきらめない。

認めたら新たな厄介なステージに移行する。

そういうこと誰も知らないからね。

レッスン後、サウナに一人ヒザを抱える。

私の事情を知ってる生徒が心配そうにサウナの扉を開ける。

「バレて落ち込んでるかと思ってのぞいた」

「うん。落ち込んでる」

そーとも。落ち込んでる。フツーにレッスン受けたいのに。

このクラスももうフツーじゃない。

サウナで汗流しても、身体は重いよ・・・。