遙 洋子 Yoko Haruka

遙日記

とうとうその時がきた

2021.09.02

ついにその時がきた・・・

「体験なさいませんか?」

声かけられた。身体が硬直した。

ABCクッキングのスタッフさんだ。

いつものように、じっとずっとガラス越しに中を覗いてたら、とうとうスタッフさんが出てきてしまった。

「いつもはたくさんの方々が料理してるんですよ」

・・・しってる・・・

「パンとか、ケーキとか、イチから作るんですよ」

・・・しってる。匂いも嗅いだ・・・・

「お料理も、基本から作るんですよ」

・・・しってる。小籠包は生地から作り、うどんも小麦粉から。

「本格的なのも作るんですよ」

・・・しってる。蟹一匹丸ごと使ったり、アジアのフルコース。

「これ」

「案内書ですか?」

「いえ。体験用紙です。記入しませんか?」

・・・どうしよう・・・

「持って帰って考えます」

「そーですか」

ああ、どうしよう。どうしよう。

中を覗きすぎてとうとう声かけられたじゃないか・・・

もうこれから覗きにくいぞ。

体験用紙を手にしようとした。

カバンのどこを探しても、ない。

・・・失った・・・!!!

うっそーーーーーーーーーーーっ

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