遙日記
手で喋ってみたら・・
2021.07.02
もう、私は口で会話をするということを手放したようだ。
エステに行った。
エステティシャンが聞く。
「今日はどこがお辛いですか」
私は肩と背中に手を当てた。
「肩と背中ですね。体調はどうですか」
手のひらを胸のあたりでヒラヒラさせた。
「まあまあ、ですね。オイルの香りは何にしますか」
手のひらをエステティシャンに差し出した。
「私が選んでいいのですね。では、これでどうです?」
指を立てた。
「関心なかったですね。ふふ」
エステに入ってから施術まで、言葉を一言も発さなかった。
エステが終わり、私は両手で紙とペンのしぐさをした。
「お会計ですね」とエステティシャンが言う。
サインをして出た。
片手を大きく上にあげて振った。
「またのご来店お待ちしてますねーーー」
そ。また来るね、の意味だ。
間違えず、全部、手言葉を理解してくれた。
マスクは言葉を捨てさせる。
手で喋ったら、全部、通じるじゃんっ。