遙 洋子 Yoko Haruka

遙日記

消えない女の子の言葉

2021.06.27

奈良の山奥にある温泉に行った。

そこは、これが日本か? というくらい子だくさんだった。

どの女性も子連れで入浴していた。

「ああ、ここまで来ると、子が産めるんだ・・・」と実感した。

都会のスーパー銭湯ではない光景だった。

 

露天風呂につかりすぎて、風に当たった。

うーわっ、うーわっ、つかりすぎた・・・、と思うなり、

「大丈夫ですかっ」と声かけられた。

私はよろけてないし、ふらついてもない。

・・・なんて、安全な町なんだ・・・

 

風呂を出ると、私の腰の周りを子供たちが走る。

背後から母親が子を叱る。

女の子がお菓子を持って、「ママこれ買って」という。

「これ買って」の、「これ買・・・」くらいでママが返事する。

「買いませんっ!」

一刀両断とはこのことだ、という拒絶の仕方。

泣きそうになった。

・・・私に買わせてくれ。頼むから、私に買わせて・・・

お菓子じゃないか。数百円じゃないか。

 

大阪に着いた。

まだ・・・私はお菓子を買ってやりたい・・・。

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