遙 洋子 Yoko Haruka

遙日記

悲しい兄弟の会話

2021.02.08

メニューを前に、嘆いた。

「私は、一人前では足らんねん・・・」

兄が言った。

「刺身と天ぷらあったらええやないか」

「それでは足らんねん。もう一品いるんや。満腹にならないと、寝るまで食べてしまうんや」

「お前は、貧しい経験が、満腹でないと寝れない身体を作ったんやな・・・」

・・・?

「貧しかった記憶ないけど?」

「・・・そうやった。俺ら、裕福に育ったんやった・・・」

兄嫁が「これは? 刺身と天ぷらと鍋と茶碗蒸しと他2品ついてる」

それにした。

 

 

「お前、それ、食えへんの? 俺食べる」と兄。

「これは、私が残した魚の皮、や」と私。

 

・・・貧しかった経験が、皮を食べようとさせるんやな・・・、とは言わないでおいてあげた。

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