体格のいい青年がジムにいた。

その青年のことが忘れられない。

青年がトレーナーにこぼす悩みだった。

横の機械で運動しながら聞いてしまった。

「僕は身体が固い。ボディビルも身体が柔らかいほうが有利ですよね？　身体が柔らかい人が羨ましい。ズルいと思う。だって、そういう人って元々身体が柔らかいから。僕は女性にもてない。僕みたいのが絶対浮気しないのに。かっこいい奴がモテる。そんな奴は浮気するのに。僕は鼻が低い。ずっと低いまま。すごく嫌だ」

なんと可愛い悩みだろう。なんと純粋で、青春なのだろう。

大人になれば、カネの悩みになり、複雑な人間関係の悩みになり、体調の悩みになる。

鼻が低いことが、悩みだぞ。。。

青春の嘆きは終わらない。

「天は二物を与えず、っていうけれど、僕は、神様から一物だって、もらっていない」

その言葉に胸を打たれた。

「きみ、とってもチャーミングですから」

そう言って、スタジオを出た。

私・・・おせっかいババアになった。