遙 洋子 Yoko Haruka

遙日記

遙また叱られる・・・

2020.12.28

ジムで鍛えていると、トレーナーのため息がよく聞こえる。

「それ、その重さしかできんか・・・。ふーっ」

「それで、そんなに、しんどいか・・・。ふーーー」

「背中まるめるほど、しんどいか・・・。ふうう」

そして、提案される。

「新しいこれ、してみいひんか?」

トレーナーは足首に巻く重りの道具を手にしていた。

「いやっ。それ、したくない」

「なんで?」

「楽しくなさそう。私は楽しそうなことしかしたくない。あの人みたいのがしたい」

「あの人みたいのは、君はまだ無理なんや」

そして、

「こら。自分のトレーニングに集中しなさい。目があの人ばかり見てる。自分の姿を鏡で見なさい」

「・・・あの人みたいのが・・・したい・・・・」

「わかった。じゃあ、似たのをやらせてあげる。足が上で顔が下・・・こらっ。マスクが目しか覆っていないやないか。それじゃ何も見えんやないかっ」

「苦しいのが嫌で、ゆるくしたら、うつむいたら、マスクが目とおでこしか覆わない・・・」

「まず、見えるようにしなさいっ。マスクをきつくしなさいっ。マスクで目じゃなく口を隠しなさいっ」

そして、まだ叱られる。

「こらっ。目はうらやましい人を見るのではなく、自分を見るっ。」

 

 

ずーっ、と、叱られた一日。

 

 

share

Tweet

  • 猫様のお言葉
  • 日経ビジネス電子版