遙 洋子 Yoko Haruka

遙日記

ぬれせんべい布団を買った

2020.12.13

布団を買いに、男友達につきあってもらった。

「床に直接敷いて寝ても、痛くないのがいいんだ。で、重くないのがいいんだ。前に買ったやつ、軽いけど、痛くて失敗したんだ。で、サイズも失敗したんだ。」

「全部失敗じゃないですか」

「そ。私は、買い物はいつも、失敗するんだ」

 

そこに、女性の店員がやってきた。

 

「痛くないのなら、これがお勧めです」

「軽いやつで、痛くないのがいいんだ」

「なら、これが軽いですよ」

「それ、買って失敗したんだ」

「では、こっちがお勧めです。お客様が失敗されたというマットを、サブレ、に例えるなら、これは、ぬれせんべい、です」

「ほー。でも、ベッドも迷ってるんだ。だって、床で寝てて、トイレに起き上がるの、大変やでぇ」

「遙さん、床から立ち上がるなら、ヒジを使えばいいですよ。こうやって・・・」

「え? 床で寝てるの?」

「そーですよ。僕ずっと床です。起き上がるのは、ヒジをこうやるんですよ。見てください。こーやって・・・」

「折り畳みベッドにする」

「お客様、折り畳みベッドは私が単身者マンションで経験しましたが、固くで痛いですよ」

「じゃー、マットと折り畳みベッドと別に買う?」

「お客様、他店になりますが、そこで折り畳みベッドをご覧になってから、このマットをご判断されたらよろしいのでは?」

「あのね・・・他店に行ったら、もう、ここに戻る体力は、ないの・・・」

「遙さん、こうやって、ヒジをつくんですよ。そしたら、ベッドを買わないでも、床から起き上がれますよ。ほらっ」

「お客様、ご体力がなければ、まず、マットを買って、で、他店でいいのがあれば、これを、(小声で)返品なさればよいのです」

「ありがとう。(名札を見て)武田さん」

「ありがとうあございます。私、結婚前は、田中っていう名前だったんですよ」

「なんで、聞いてないこと、言うの?。武田さん、オモロイね」

「オモロイのは、お客様のほうです。楽しませてもらいました」

「持てるかな? 重くないかな?」

「わっ。遙さん、この展示してあるマット、持ちあがりません。遙さんには、持てない重さかもしれませんっ」

「それ、床とひっつけてあるよ。展示用で立ててあるマットだからね。倒れないようにね。ほら。ひっついてる。床。」

「ほんまやっ」

「あんた、オモロイなぁ・・・」

 

私の家には、ぬれせんべい、がある。

・・・せんべい布団と、ぬれせんべい布団、と、何が違うんだ?

湿っているせんべい布団なら、もっと悪いじゃないか。

ま、寝てみよう!

 

 

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