遙 洋子 Yoko Haruka

遙日記

私がほしいもの

2020.12.04

「毎日、待ってたんやで」と、ボディビルジムの元世界チャンピオンが言った。

うれしいことだ。

「私、ここに筋肉がほしいんです」

「ふむ」

「それと、ここ。ここをもっと盛り上げたい」

「ふむ」

「ここですよ。先生」

「君がほしいという筋肉の場所はな、ここに来る男のボディビルダーが求める筋肉やで。わかってるか」

「女性は?」

「女性が望むのは、女性らしいラインとヒップアップとかや。君は、男の望む形になりたいんやな」

「ほら、あれ。彼の肩がほしい」

「あれは消防士や・・・」

「あと、彼のあの胸がほしい」

「あいつはプロレスラーや・・・」

 

「それと、首を鍛えるマシンないですか?」

「あるよ。縦横左右、360度の首を鍛えられる」

「うおおお。それする。それする。首が太くなりたいんだ!」

「君は・・・」

チャンピオンはため息をついた後、ちょっと怒った感じで、他の男性たちに聞いた。

「首、鍛えてるかっ!」

「・・やってません・・」と消防士。

「首、やってるかっ」

「やってませんっ」とプロレスラー。

「やらなあかんやないかっ!」

 

チャンピオンはみなまで言わないけど、私、彼の心の声が聞こえるんだ。

こんなひょろこい女が、お前たちと同じ筋肉を求め、その上に、お前たちが鍛えようとしない首まで挑戦しようとしているぞ。

お前たち、プロとしてそれでええと思ってるんか!・・・・・だ。

 

ひひひ。がんばってやるっ。

ライバルは、現役消防士と、プロレスラーだいっ。

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