遙 洋子 Yoko Haruka

遙日記

京の心を買う

2024.07.11

京都の名菓を眺めるのが好きだ。

伊勢丹のお菓子売り場をゆっくり見て歩く。

それはもう、博物館とか美術館を見る感じ。

お菓子の美しさにいちいち感動しつつ、それらがほぼ生菓子だ。

ある店員さんから声をかけられた。

 

 

「うち、京都のセンベイ屋ですねん」

 

 

見ると年配の男性店員だ。

「これがうちの看板センベイですねん。どうぞ味見を」

差し出されたカケラを食べた。

昔懐かしい味がした。

・・・買った・・・。

他の店が、「いらっしゃいまっせ~」と無機質な呼び声に比べ、

「うち、京都のセンベイ屋ですねん」は、心に響いた。

言葉に心があった。

他店の「ご試食ど~ぞ~」の掛け声に比べ、

「これ、看板商品ですねん」は、思いがあった。

商売とは、心、だ。

それを気づかせてくれる、京都が好きだ。

 

 

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