「あなたは身体が柔らかいわねぇ」

主婦の女性からスタジオで声かけられた。

「前にも倒れられるでしょお？」

いいとこを見せなきゃいけないように、開脚前屈を披露した。

「ほらああ。あなた柔らかいじゃない？毎日柔軟してるの？」

実は、ウン十年バレエやってきて、なんて言っても仕方ない。

「週一回です」

思わず敬語を使った。

「え？週一回で柔らかくなるの？」

「柔らかくしたいなら週3回です」

ずっと敬語使った。

まるで、親戚のおばさまと姪の会話みたいだった。

レッスン後、ダンスの先生に報告した。

「へっ？　あの女性は洋子ちゃんと同じ歳やでっ」

ええええ～っ。

叔母と姪の会話は破綻した。

絶対向こうも年下だと思ってるはず。

そういう目線だった。

どうしよう。今後。実はタメなんていまさら言えねーぞ。

このまま突っ走るぞ。